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【書籍】人生再考の契機となる書 ー 荒俣宏監修「知識人99人の死に方」

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偉人の一生って面白い

2012年に一番売れた伝記といえば、「スティーブ・ジョブズ」ではないでしょうか。


現在、「スティーブ・ジョブズⅠ」を読み終わり、「スティーブ・ジョブズⅡ」に突入しました。まさに「突入」という単語が相応しく、ジョブズの人生はジェットコースターのように激しく、勢い良く終盤に向けて疾走しています。

ジョブズの本は、映像とともに読むと、より分かりやすいです。

NHK スティーブ・ジョブズ特集|NHKスペシャル 世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ *

http://www.nhk.or.jp/special/stevejobs/

実親に捨てられ、養親に育てられたジョブズは、若い時にドラッグや禅といったスピリチュアルなものに傾倒し、ある種、病的なほど、人との接し方に難がありました。Appleは大好きな会社ですが、その背景でジョブズがどのように会社を動かしてきたか、またどんな失敗をしたかを覗き見る事ができ、非常に面白いです。

今はなきジョブズの人生を追想出来るのも、「伝記」のお陰です。「伝記」で自分の人生を世に残すという、ジョブズ最後のセルフプロデュースを、彼が亡くなった今でも間接的に感じることが出来た気がします。

今日は、そんな偉人の「伝記」的な書物の中でも、少し特殊な、「知識人99人の死に方」という本を紹介します。

魅力的な知識人たち

いずれも戦後に死んだ、99人の知識人の「死」を紹介する書籍です。知識人といってもジャンルは多岐にわたります。幾つかそのラインナップをご紹介しましょう。

  • 手塚治虫(漫画家):死因「胃ガン」
  • 寺山修司(作家・劇作家):死因「肝硬変に腹膜炎を併発」
  • 折口信夫※あるいは釈迢空(民俗学者・国文学者):死因「胃ガン」
  • 梅原龍三郎(画家):死因「急性肺炎」
  • 向田邦子(作家・脚本家):死因「飛行機事故」
  • 中上健次(作家):死因「腎臓ガン」
  • 長谷川町子(漫画家):死因「冠動脈硬化症による心不全」
  • 古今亭志ん生(落語家):死因「心筋梗塞」
  • 吉田茂(政治家):死因「心筋梗塞」

漫画家、作家、学者、政治家、画家、落語家…。少しピックアップしただけでも幅広いジャンルに渡っていることがお分かりいただけると思います。

生前の活躍を耳にした事がある人も、どんな末期を遂げたのかはあまり知りませんでした。特に、死んでしまった人については美談ばかりが語られ、壮絶な死に方をした場合でも掻き消されている気がします。

本書は、そんな知識人の最後を、リアルに描くドキュメントなのです。

死に対する心構え、できてますか

「死」からは目を背けたい。なるべくなら関わりたくない。どんな心構えで「死」と相対したらいいか分からない。死ぬのが怖い。死にたくない。
「死」は大っぴらに語られることがありません。第三者の「死」について話すときは声を潜める。でも、人間の一番の関心事は「生死」です。
本書では、知識人の「死」をリアルに描くことで、読者に「99の死を死んでみてはいかがかと」勧めています。

われわれは、
死の準備に対して
準備する。

今際の際で、私たちはどんな死に様を晒す事になるのでしょうか。知識人の死を知る事は、死の準備の、さらなる準備段階として、助けになるかもしれません。

手塚治虫の死に、涙が止まらない

「漫画の神様」手塚治虫の死は、60歳で訪れました。

 17歳のデビューから15万枚にものぼる天文学的な量の漫画原稿を描いてきた。漫画の作品数は400作をゆうに超え、アニメ作品のタイトル数も60作を数える。
 手塚治虫の胸中には、40年間描き統けたそのすべての作品を貫く大きなテーマがあったのだという。手塚みずからがこう著している。

 終始一貫して僕が自分の漫画の中で描こうとしているのは次ぎの大きな主張です。
 『生命を大事にしよう!』       ー『手塚治虫 漫画40年』

– 15ページ

自身も医者であり、生命の大切さを訴える事を生涯のテーマとした手塚治虫が、若干60歳で逝去したのは、いったいなぜでしょうか。それは、彼の漫画への熱意が、裏目に出た結果でした。仕事の虫で、とにかく漫画を書き続ける生活を続けた手塚治虫は、病魔の発見が遅かったのです。

手塚治虫のはっきりとした最後の言葉は「仕事をする。仕事をさせてくれ」でした。既に病院と自宅の区別もつかず朦朧としていたにも関わらず、最後まで手塚は漫画を描きたいと熱望して死んでいったのです。

 やがて呼吸が静かになっていき、上下に揺れる身体が止まろうとした。たまらず、るみ子が「息して、お父様、息をしてよ、ほら」と叫んだ。手塚は小さく胸を持ち上げ、「クーゥゥ」とわずかに音を漏らし、懸命に呼吸を始めた。るみ子は「息をして、止めちゃ、だめ、ほら、吸って、吐いて、吸って」と絶叫した。手塚の枕元に座っていた夫人が目に涙をためて「るみ子、もういい、もういいの」と言った直後、手塚治虫は、ふっと溜め息をつくように、息をひきとった。

– 27ページ

漫画に対する手塚治虫の執念には圧倒されます。志半ばで、「死」によって漫画を描く事を中断せざるを得なかった手塚治虫の心中を慮ると、涙が溢れて止まりません。

99人分の死を死んでみて思ったこと

無念の死、あるいは全うした死、不意の死…。様々な死の読書体験を通じて、私は涙を流しながら考え込んでしまいました。「一体私に何か残せるものがあるのか。」「満足だと呟いて死ぬには、どう生きればよいか。」「死ぬにあたって、何か準備をしておいた方がいいのではないか」こんな思考が次から次へと湧いて、徒に時を過ごしてしまいました。

これらの知識人のように、後世まで名を残すことも、世の中の役に立つことも出来ないかもしれないけど、明日死んでもいいように生きたい。きっとそれは、やりたいことをやりたいようにやるような、単純で簡単な道ではないんだろうな、と思います。

皆さんも、死に向けて準備の準備、してみませんか?

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ABOUT ME
Webと本の人 Webooker (ウェブッカー)
Webと本の人 Webooker (ウェブッカー)
フリーランス Webデザイナー・グラフィックデザイナー
2009年からIT業界に。
WebデザイナーとしてITベンチャー企業、SaaS企業、Web制作会社に勤務。
2016年11⽉より独⽴し、フリーランスのWebデザイナー、グラフィックデザイナーとして活動
2024年1月から大阪のシステム会社に勤務し、フリーランスとの二足のわらじで現在に⾄る。 2子の親。フルリモートワーク。
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