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併せて読むと理解が深まる、「ソーシャル・ビジネス革命」と「もの食う人びと」。


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意外な(?)本が「繋がり」ました

ムハマド・ユヌス「ソーシャル・ビジネス革命ー世界の課題を解決する新たな経済システム」

ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム

本書で初めて作者を知りましたが、2006年、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏の著作です。ノーベル平和賞の受賞理由は、「貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献」に対してです。バングラデシュにある「グラミン銀行」の創設者で、それまで融資を受けられなかった貧困層へ融資を行いました。「マイクロクレジット」という概念を普及させ、他の銀行もそれに追従して貧困層へ融資を始めるなど、大きな影響を与えました。栄養問題の改善、女性の家の外での就労促進など、「社会がより豊かになるためのソーシャル・ビジネス」を一貫して行っている人物です。

そのムハマド氏が、『ムハマド・ユヌス自伝 : 貧困なき世界をめざす銀行家』の次に上梓したのが、本作「ソーシャル・ビジネス革命」。ヨーグルトのダノンがバングラデシュに進出し、ソーシャル・ビジネスを成功させるまでや、水インフラを整備する「グラミン・ヴェオリア・ウォーター」の試みを紹介する内容です。

そもそも、「ソーシャル・ビジネスとは何か」について詳細に定義されていますので、前作を未読の方(私もそうです)にもとっつきやすいです。

そしてこの本と繋がったのが、こちらの本。

辺見庸「もの食う人びと」

もの食う人びと (角川文庫)

こちらは小説家でありジャーナリスト、詩人でもある辺見庸の、「食」に関するルポルタージュです。もはや説明も不要なほど、ヒットした著作でありますが、今回紹介するに至った経緯を簡単に説明しておきます。

本作は、人間の極限状態の「食」について、作者が現地を旅し、実際に食しながらルポしたものです。この作品のスタートとなる地点がバングラデシュ。もうお分かりですね。

先ほどご紹介した「ソーシャル・ビジネス革命」の舞台もバングラデシュなのです。両方とも、困窮したバングラデシュの状況を描いたルポルタージュなのですが、何の予備知識もなく、同時に読み始めた本に共通項があったので「お?」と思いました。

マクロとミクロのバングラデシュ

「ソーシャル・ビジネス革命」がマクロ的観点の著作だとすれば、「もの食う人びと」はミクロな観点の著作だと言えます。「ソーシャル・ビジネス革命」を読み始めた時は、バングラデシュと聞いても特にイメージが湧きませんでした。ところが、「もの食う人びと」を読むと、バングラデシュの困窮のリアル、食生活がいかに切迫したものかがよく分かりました。

残飯を売って商売をするひとたち。地面に落ちた、食べ残しの腐った肉にかじりつく子ども。「ソーシャル・ビジネス革命」では、社会的な枠組みや運動について述懐されていますが、人々がどんな状況で生活しているか、どれほど困窮しているかはイマイチよく分かりませんでした。

バングラデシュでは困窮により衛生管理が出来ておらず、ひどい食生活を送っている。
→だから、ソーシャル・ビジネスでなんとかより良くしていきたい!

この図式を、非常によく理解出来ました。この2冊を同時に読んだ事は、自分にとって1つの幸運でした。

点と点が繋がる面白さ

そもそも、私が読書をしていて「楽しい!」と感じる瞬間は多々ありますが、ある本とある本が「繋がる」面白さというのは、群を抜いて上位の喜びであります。

例えば清水義範の「春高楼の」。

春高楼の (講談社文庫)

明治時代に東京帝国大学に入学する樋口淳一郎青年の物語です。この作品は、私の中で2つの文学と繋がりました。1つは夏目漱石の「三四郎」。もう1つが大杉栄の「獄中記」です。

※ともに、電子書籍で無料で読めますのでぜひ!↓

三四郎

獄中記

「春高楼の」で描かれている、田舎から大学へ進学するための上京、そこで起こる様々な出来事、恋愛など、モチーフが全て「三四郎」と重なります。講談社文庫の清原康正氏による「解説」にも、同様の指摘が書かれています。

本書は、この『三四郎』のパスティーシュであることは言うまでもないのだが、時代背景をもう少し前の時期にもってくることで、異なった時代状況とのクロスぶりを示している。

パスティーシュ、つまり模倣していると断言しています。ここまで類似性が高いので、おそらく作者の清水義範も意図的に模倣しているのだと思いますが、「三四郎」よりもっとくだけた、明るい青春譚といった感じです。実際、声に出して笑ってしまうようなところも。(ニーチェのとことかw)

そしてもう1つ、「獄中記」はいかに繋がったか。「春高楼の」には、社会主義運動の萌芽〜活動が活発になるまでが描かれており、重要な登場人物として、歴史上の人物である「幸徳秋水」が出てきます。社会主義運動といえば、大杉栄ですね。最近読んだ大杉栄の「獄中記」とピーン!と繋がりました。(獄中記については詳しくこちらの記事で書いていますので、よろしければご参照ください。)

【Kindle無料本】大杉栄の著作が痛快で格好良くて笑えるのだ | Webooker

http://webooker.info/2013/01/kindle-osugi-sakae/

かくのごとく、読んだ本と本が繋がると非常に喜びを覚える訳です。知識が繋がる瞬間を、体感出来るとでもいいましょうか。一種の快感が脳内を駆け巡ります。

これだから読書はやめられない

「1Q84」関連で「読んでてよかった本」「これから読みたい本」でも紹介したように、ある1冊を契機として、次から次へと本の連鎖が起こる時があります。それが既に読んだ本であったり、これから読みたい本であったりしますが、常に読書欲が連環しており、だからずっと読書を止められないんだろうなと思うわけであります。これだから読書はやめられない。

皆様の連環の契機になる本、どんなものがありましたか?

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