フリーランス(個人事業主)のWebデザイナーとして開業するためのまとめ
現在は会社に所属して月給をもらっていますが、もし個人事業主になるとしたらどうなるのか、試しに色々調べています。 せっかく調べるので備忘録としてエントリにまとめておきます。
尚、今回調べた内容は以下を前提としています。
- Webデザイナーとして開業
- 従業員は雇わない、家族も雇わない
- 事務所は持たない(西宮市の自宅)
別の職種で起業しようとされている方は別の手続きが必要になる場合(許認可が必要など)がありますのでご注意ください。
個人事業主になるためには
- 事業所となる場所(自宅も可)の所轄の税務署・自治体に「個人事業主開業届」を提出する。
これだけで個人事業主になれます。保証人なども不要。
- ついでに「青色申告申請書」も出しておくと便利。
- 地域の商工会議所に加入しておくこともオススメらしい。(ただし、入会金が必要。西宮商工会議所の場合、個人会員は年会費が1口10,000円から。)
- 「小規模企業共済」への加入も国税庁によって薦められている。いわば個人事業主のための退職金制度。毎月の掛け金(1,000円〜7万円)が全額控除の対象になる。
個人事業主としての開業準備
Webデザイナーとして開業する場合の流れ。職種によっては許認可が必要など、手続きが異なるので注意。
前段階
- 開業資金を準備(開業準備資金・運転資金を試算する)
- 事業のアウトラインを決める(事業概況書、事業方針、資金計画書、事業計画書を作るのが◎)
- 市場や業界の動向、競合を調査
直前段階
- 開業する場所を決める(自宅OR事務所)
- 屋号を登記する
- 印刷物を発注(挨拶状、名刺、封筒などを発注)
開業手続き
- 税務署に「個人事業主開業届」を提出(前述)
その他、開業にともなって提出が必要な書類
- 青色申告書(確定申告時)
- 減価償却の償却方法の届出(開業した年の確定申告期限までに提出。建物・自動車・パソコン・コピー機など使っていくうちに価値が減っていくものを「減価償却資産」というが、減価償却資産の償却方法を定額法、定率法のどちらにするかを届け出る書類。)[手続名]所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続|申告所得税関係|国税庁
- (記帳をコンピュータでする場合)国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書の提出。[手続名]国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請|法人税|国税庁
個人事業主に必要なもの
- 仕事スペース(自宅OR事務所)
- 通信機器(電話・インターネットなど)
- 社名、ロゴマーク、名刺、封筒
- 伝票類(請求書、納品書、領収書など)
※請求書・納品書・取引を証明する書類を「証ひょう」といい、個人事業主の場合は請求書、納品書で5年、領収書で7年間保存することが義務付けられている。そのために分かりやすくファイリング出来るものを用意しておくと良さそう。
運営ルールを決めておく
- 営業時間、休業日(外部に示す。長期休業などは事前にアナウンスする。)
- 料金(料金体系が決まっている場合は料金表を作成し、外部に示す。)
- 支払いルール(請求書締め日、支払日、支払い方法)
商工会議所を利用するメリット
商工会議所は地域経済の振興を目的として、地域のすべての商工業者のために設けられた地域総合経済団体。 以下は西宮商工会議所の主な支援内容。
- 経営相談(融資相談、労務相談、税務相談)
- 経営支援(IT活用支援、経営・技術支援、海外展開支援など)
- 起業サポート
- 人材育成(就職説明会・面談会、パソコン教室、各種資格取得など)
- 人脈拡大(部会、青年部、女性会)
- PR・販路拡大(会報誌によるPR、商談会・交流会、Webによる情報発信など)
- 会員サービス(各種共済/保険制度、健康診断受信料補助サービスなど)
個人事業主の配偶者控除(夫がサラリーマンで、妻が個人事業主として働く場合)
- 夫の被扶養者になっていて、夫の所得税・住民税で配偶者控除と配偶者特別控除を受けているなら、収入が103万円・130万円・141万円を超えた場合に控除が受けられなくなり、夫の支払う税金が多くなる。
※103万円・130万円・141万円の壁は、夫の年収によって異なる。 - 所得税は、収入が103万円を超えた分にかかる。
- 収入が130万円を超えたら、国民保険や国民年金に加入して保険料を納めることに。
確定申告(青色申告)について
個人事業主が使用可能な申告の種別として「白色申告」と「青色申告」がある。 白色申告より青色申告の方が個人事業主にとって有利だと言われる。
白色申告と青色申告の違いはこちらのページがわかりやすかったです。
白色申告と青色申告の違いとは? | THE LANCER(ザ・ランサー)
- 白色のメリット:記帳義務がない(但し、所得が300万円を超えたら記帳義務が発生)。記帳は経営状態を把握するためにも重要で、必要不可欠。どのみち記帳をするなら青色申告がオススメ。
- 青色のメリットその1:青色申告特別控除(65万円と10万円の2種類)。10万円の控除を受けるには簡易帳簿で記帳すればOK。65万円の控除を受けるには正規の簿記の原則により記帳が必要。また、貸借対照表を損益計算書とともに確定申告に添付して提出する必要がある。
- 青色のメリットその2:専従者給与と専従者控除青色事業専従者給与(一緒に働く家族の給与)。一緒に働く家族の給与を経費にするには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出。
- 青色のメリットその3:貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)。貸し金の貸し倒れによる損失の見込み額として、その年の貸金帳簿価額の5.5%までが必要経費として認められる。
- 青色のメリットその4:純損失の繰り越し。純損失が発生した場合、翌年から3年間その損失額を各年の所得から差し引くことが可能。
個人事業主の税金
- 住民税
- 所得税:課税所得が330万円までは10%。ただし、所得がなければ税金はかからない。
- (事業の所得が290万円を越える場合)事業税3〜5%
法人事業として会社設立する場合のメリット・デメリット
デメリット
- 登記・認証手続きが必要。時間とお金がかかる
- 起業にあたって取締役など最低でも4人以上が必要(1人では不可能)
- 事業内容を変更する際に手続きが必要
メリット
- 個人事業主より融資を受けやすい
- 大きな案件を受注する時に信頼されやすい
- 倒産した場合:経営者が出資金の範囲内で責任を負う
個人事業主として起業する場合のメリット・デメリット
デメリット
- 企業と同等の社会的な信用を得るのは難しい(信頼されにくい)
- 融資を受けづらい
- 受けた融資=個人の借金
- 倒産した場合:すべての責任が事業者個人にかかる
- 組合が運営する健康保険や年金保険に加入できないため、保険料が若干高い
- 労災保険に加入できない(労働基準法が適用されない) ((不安な場合は民間保険会社の傷害保険に加入する。もしくは、アルバイトを雇って労災保険に加入させた場合、雇用主も特別加入制度で加入することが可能。(この場合は労働保険事務組合を通して労働基準監督局に申請する)))
メリット
- 書類を提出すればすぐに始められる
- 収入がゼロでも個人事業主を継続出来る
- 記帳のレベルに応じて10万円・45万円・55万円の控除が適用できる
- 事業内容の変更に手続きが不要
- 出資者や株主への決算報告が不要
その他備考
- 個人事業主の事業年度末は12月31日。
その他
- まず幾ら稼げばいいのか?→月収15万円をひとまずの目標にしよう。
- 記帳から節税のアドバイス、確定申告まで税務全般のアドバイスをしてくれるのが「税理士」。専門家を上手に活用すると良い。
- 自宅を仕事場にする場合、家賃や電話代、電気代等をどのように分けるかは、事業用とプライベート用の面積などで按分する。また、事業用とプライベート用で銀行口座や金庫・財布を分けておくほうが良い。
参考になったURL
- 西宮商工会議所「徹底活用ガイド」
http://n-cci.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/guide.pdf
西宮商工会議所の支援内容がまとめられているパンフレットです。 - 中小企業庁 / The Small and Medium Enterprise Agency
中小企業庁の公式サイト。 - 国税庁ホームページ
言うまでもなく一番情報が正確。ただし、基礎知識のない私には分からない言葉も多かったです。 - 中小企業庁:中小企業の経営指標(中小企業経営調査)
総務省統計局が出している中小企業の経営指標。
参考になった図書
太陽企画出版
売り上げランキング: 660,180
「女性のための」と冠するとおり、女性ならではの身体の変化やライフステージの変化を受け入れながらも仕事をしていくことを奨励する本。 最低限の事務手続きについて触れながら、妊娠・出産(もしかすると流産)・閉経・更年期障害といった女性特有の変化を受容しながら論が進んでいくため、読んでいて心地よかったです。
朝日新聞出版
売り上げランキング: 310
調べていくにつれ、個人事業主として起業するには簿記の知識が必要だと感じるようになりました。「簿記の資格を取る前にまず読め!」と薦められたのがこの本でした。 帯に「簿記を勉強しなくても会計がわかる!!」とある通り、細かい記帳の仕方などを学ぶ前に、全体を概要的に把握するのに適しているとのこと。
各種届出や手続きについて、より具体的に記載されているのがこちらの本。どんな書式で何をいつまでに提出すれば良いのかが分かりやすくまとめられています。
[…] がグワーッと盛り上がったのを覚えています。自分で本を読んで足りない知識を補い、フリーランス(個人事業主)のWebデザイナーとして開業するためのまとめという記事を書きました。 […]