「1Q84」関連で「読んでてよかった本」「これから読みたい本」
今日は「1Q84」(村上春樹)の文庫本発売日!3ヶ月連続刊行がいよいよスタートです。で文庫化について紹介したが、遅ればせながらやっと「1Q84」を読んでいる。
「1Q84 BOOK 2」まで進んだところだ。
作品のテーマを知って、最近興味を持って読んでいたテーマと近い事が分かり、もっと早く読んでいればよかったなーと思った。また、本作品から派生して興味を持った本もある。
そこで、本作品関連で、「読んでてよかった!」「これから読みたい」と思った作品を集めてみた。
「1Q84」未読の方にはネタバレになる可能性もあるため、了承された方のみどうぞ。
「読んでてよかった!」編
村上春樹著の「アンダーグラウンド」と、その続編である「約束された場所で-underground2」。
オウム真理教の犯した地下鉄サリン事件について、「アンダーグラウンド」では被害者に、「約束された場所で」ではオウム信者(元信者含む)にインタビューし、丁寧にまとめたノンフィクション作品である。
”丁寧に”というのは、両作ともインタビュイーの意思を尊重することに細心しており、了承が得られない事はしない、載せないといった(当然といえば当然だが)細々とした配慮が見られるからだ。特に「アンダーグラウンド」では、被害の軽重などは加味せず、62名ものインタビューを感情に走らず冷静にまとめており、その意味で地下鉄サリン事件の生きた証言としての資料的価値のある作品とも言えよう。
「1Q84」では、主人公の一人、”青豆(あおまめ)”の両親が信仰しているとして、「証人会」(エホバの証人)を登場させている。
また、村上春樹自身が語っているように、オウム真理教の林泰男被告(死刑囚)への興味から湧出した、
「何処にでもいる様な普通の人が、何者かに洗脳される事によって暗殺者に変わると言うイメージ」 ((引用:スペインの新聞、La Vanguardia紙に載った村上春樹氏のインタビュー全訳))
が本作執筆の動機であり、”信仰とはなにか”を考えさせられる内容になっている。
1995年に起きた地下鉄サリン事件から17年、記憶を風化させないためにも、また事件を知らない若い世代も、「アンダーグラウンド」と「約束された場所で」を読むことで、「1Q84」への共感度がより高まると思う。
オウム真理教といって忘れてはならないのが森達也。
私がオウム真理教に興味を持つ契機となったのが、森達也の著作を読んでからである。
そもそもは、伊坂幸太郎「グラスホッパー」の参考文献として、氏の「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」が挙げられており、
”なんだこのタイトル、ぐっとくる”
と手にとったのが、森達也との出会いだった。
エッセイなのだが、とても自分の感性によく合った。
そこからは「A」「A2」「A3」と一気に読み進め、「それでもドキュメンタリーは嘘をつく」、「マジョガリガリ」、「メメント」などを立て続けに読んだ。
オウム真理教を内部から撮ったドキュメンタリー映画の監督である著者が、その撮影裏話や思想をまとめたのがこの3冊である。
オウム真理教について、またはオウム裁判について、悪(オウム真理教)VS善良な市民(我々)という単純化された二項対立のパースペクティブからでなく、”なぜ地下鉄サリン事件が起こったのか”、”第二の地下鉄サリン事件を起こさないために我々は何をすべきか”を見極めたいなら、必読である。
先述のオウム信者へのインタビューをまとめた「約束された場所で」とも通ずる部分があり、ぜひ合わせて読むことをおすすめする。
「読んでてよかった!」番外編
浦沢直樹の「20世紀少年」も”読んでてよかった!”のだが、マンガなので番外編とした。
ここ数年、マンガは数えるほどしか読んでいないが、「のだめカンタービレ」、「デスノート」などと並んで強く印象に残っている作品。
(ちなみに今ハマっているのは東村アキコの「海月姫」。ヲタクが主人公なのに、オシャレで切ないのだ。そして何より笑える。)
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「20世紀少年」は、1970年前後から現代までを舞台に描いた、大人の冒険活劇だ。そのストーリーには宗教の要素が多分に含まれている。
特定の宗教をモデルにしたという言質は作中にないが、例えば細菌兵器の散布や、裏切り者を殺害する「絶交(=ポア?)」はオウム真理教を想起させるし、「友民党」という政党は、創価学会をモデルにしているのではという意見もある。 ((http://ja.wikipedia.org/wiki/20%E4%B8%96%E7%B4%80%E5%B0%91%E5%B9%B4))
ある特定の宗教のみをモデルにしたとは思わないが、実在する宗教の幾つかの要素を複合的にまとめたものが「ともだち」ではないかと思う。
一般的な生活を送っていたはずの主人公ケンヂが、「ともだち」や正体不明の巨大な圧力によって翻弄され、気付けば強大な敵と対峙していた状況は、まさに村上春樹が「1Q84]で描きたかった
「何処にでもいる様な普通の人が、何者かに洗脳される事によって暗殺者に変わると言うイメージ」
と通ずるものがある。
あるいは、特に目立ったところもなかった「ともだち」が、教祖となり、人類の脅威に変わっていったという展開の方が、村上春樹の目指すテーマとより合致するかもしれない。
知らず知らずのうちに目に見えない強大な力に翻弄され、巻き込まれていく恐怖を、「20世紀少年」、「1Q84」に共通して感じた。
「これから読みたい」編
「1Q84」というタイトルはすなわち「1984年」を意味している。
「現代作家お薦めの本をさらにまとめてみた」でも紹介した「作家の読書道」(Web本の雑誌編)のシリーズでも、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」は数々の作家に推奨されていたので印象に残っている。
大学の講義でもその名をよく聞いた。
1949年に発行された、古典SFの名作である。
「発行当時は発想が目新しかっただろうけど、今読んでもなー」と思い込んでいたため(本当に損した気がする)、読む機会がなかったが、「1Q84」を読む前に読んでおけば良かったと後悔している。作品に登場するモチーフとして、密に関連があるようなのだ。
例えば「1Q84」に登場する「リトル・ピープル」は、「一九八四年」に登場する「ビッグ・ブラザー」と呼応するものである。
正直「一九八四年」を読んでいないと「1Q84」を本当の意味で理解した事にならないのではないかと反省している。
「一九八四年」は近いうちに是非読みたいと思っている。
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