Web関係者なら一度は読んでみたくなる「HTML殺人事件」
HTML ― Hyper Text Markup Language。英数字を巧みに操り、意味を持ったWebページを世界に産み落とす芸術的言語。
( ゚д゚)ハッ!
思わず作品に影響されてポエティックなスタートになってしまいました。
今日は「HTML殺人事件」というなんとも魅力的なタイトルの電子書籍をご紹介します。
インパクトがあるのはタイトルだけではありません。表紙にはHTMLのソースコードがあしらわれています。「片山バベル」さんというのが著者のようです。
思わず顔を横にしてソースコードを読んでしまいますねw
2013年9月6日9時35分現在、Kindleストアで無料で手に入れる事が出来ます。 ((価格が変わる事もあると思いますので、ご購入前に必ずKindle公式ストアにてご確認ください。))Kindleの無料本ランキングでただいま8位にランクインしています。
気になる内容はというと、あらすじはこんな感じ。(いきなり誤字っていますが、たぶん「20世紀末」ですね)
29世紀末から21世紀初頭、WEBの世界が広がりつつあるなか、詩の投稿サイトや「魔窟」と言われる巨大掲示板を舞台に起こるいくつかの殺人。ディスプレイからそれを覗くのは渦巻く上昇志向の欲望を経巡る現代のサテリコンの旅でもある。キーワードは「人間は表現する葦である」。MTBやミニベロなどのバイクを駆って疾走するサイバーパンク・ミステリー・純文学。
そこはかとなく漂う厨二病の香りが、私を惹きつけて止みません。
この作者さん、この時点でなんとなく好きです。
そして出てくる「サテリコン」、「ミニベロ」というキーワード。不勉強にして聞きなれませんよ、私(;´Д`)
「サテリコン」と「ミニベロ」について調べてみた
「サテリコン」とはペトロニウスの小説「サテュリコン」のことでした。
岩波文庫かー。ガチガチの硬派やしきっと難しいんだろうなーと思ってあらすじを見たら…。
美貌の少年奴隷をはさんで争いながら南イタリアを放浪する二人の青年を中心に,好色無頼の男や女が入り乱れる.小説『サテュリコン』はまさに古代ローマの爛熟が生み落した「悪の華」だ.とりわけ,奴隷あがりの成金富豪が催す《トリマルキオンの饗宴》の場面は古来有名.セネカの諷刺短篇『アポコロキュントシス』を併載.
「美貌の少年奴隷」、「好色無類の男や女が入り乱れる」…(゚A゚;)ゴクリ
なんとも澁澤龍彦
岩波文庫、デカダンも扱うんですね…。
この衝撃は例えるなら、ちびまる子ちゃんで丸尾くんが
「ズバリ!酒池肉林は最高でしょう!」
って言ったかのような驚きですw
めちゃくちゃ面白そうです。読みたいです。
「サテュリコン」は岩波文庫から出ていますが、現在は品切れで、重版は未定だそうです。
恐らく図書館なら高確率で有るので、カーリルでお近くの図書館を探してみて下さい。
同小説をフェデリコ・フェリーニ監督が手がけた「サテリコン」という映画もあります。こちらの方が書籍より手に入りやすそうです。
↑この美麗な人が少年奴隷?…(゚A゚;)ゴクリ
表記が「サテュリコン」ではなく「サテリコン」であることから、作者の片山バベルさんは映画版の方を指しているのかもしれませんね。
そして、ボードレールの「惡の華」まで出てきました。
あ、違った。こっちですテヘペロ!(・ω< )
まさにコミックの「惡の華」のように、私も中学生か高校生の頃に「悪の華」を読んで、分かったような気分になったものです。誰もが通る道なのかもしれません。 「ミニベロ」は自転車の種類のようです。可愛いのにかっこいいですね!思っていたよりは値段も高くないです。 こんなフリーク向けのムックが出るくらいですから、人気がありそう。「HTML殺人事件」がHTMLたる所以
さて、あらすじだけでだいぶ脱線が長くなってしまいましたが、本の内容についてお話していきましょう。
本書は幾つもの章から成っていますが、全てにHTMLタグの名称がついています。
例えば、こんな感じ。
01<html>
02<head>
オシャレな章名ですね。途中で章のタイトルが足りなくなったらどうするんだろうと思ったら、brタグやfontタグも出てきましたw
さて、ネタバレしない程度にどこらへんがHTMLなのかをまとめてみました。
主人公は「Webコーディネーター」である男性「ルネ」。詩を趣味にしています。ある日、「Poem Village(通称:ぽえ村)」という詩の投稿サイトでメールをやりとりした女性が、謎の急死を遂げます。最初は自殺かと思われていましたが、死の直前に不審な男性の姿が目撃されており、警察の捜査は殺人と自殺の両面で行われる事になります。ルネは、メールをやりとりした経緯もあって、ネットの力を駆使して謎に迫っていく…、というストーリーです。
「ちゃんねる・ぜろ」という2ちゃんねる風の掲示板が出てきたり、チャットやメッセンジャーの会話でストーリーが展開したりと、インターネットの世界では馴染み深いものたちで構成されています。
ルネが殆ど部屋から出ることもなくいつしか事件に遭遇し(やっていることといえばWebの仕事とインターネット。)、気付けば現実世界でも巻き込まれていく様がリアルです。ミステリ小説というと、探偵役が自らの足で実況見分や調査を行うイメージですが、インターネット時代の今は、ネット環境さえあれば一歩も動かずに情報を得る事が出来るという訳ですね。
とはいえ、外に出る必要がある時はちゃんと外出もしています。幾らインターネット時代とはいえ、ルネは「ひきこもり探偵」ではなかったようで安心しましたw
あと、Web業界で自転車に力を入れる人って多い気がしますが ((株式会社はてなの近藤社長とか。
自転車とインターネット – jkondoのはてなブログ))、ルネの移動手段が主にMTGやミニベロなのを見ると、これもまた「Web業界あるある」だなーと思いました。
途中のHTMLを使った謎解きも、なかなか面白かったです。
という訳で、「HTML殺人事件」は「HTML殺す」とか「犯人はHTML」というお話しではなく、モチーフとしてふんだんにHTMLが盛り込まれている、というお話しのようです。
「リリイ・シュシュのすべて」のような、虚実入り交じるストーリー。
海外で「詩」はどれくらい人気があるのか、という議論が「ちゃんねる・ぜろ」で行われるシーンで、韓国詩に詳しい人の記事へのリンクが書いてあり、アクセスしてみると実際にページが表示されたので驚きました。
それ以外の実在しないURLはxなどの伏せ字になっていたのに、現実に存在するリンクも貼られているとは、なかなか凝っています。
フィクションとして読んでいたのに、現実にも繋がりがあるとビックリしますね。
ネットの掲示板と事件、現実のWebが連動する物語といえば、岩井俊二の「リリイ・シュシュのすべて」を真っ先に思い浮かべました。
2001年の作品ですが、今読んでもすごく面白かったです。(確か、去年くらいに初めて読みました。)映画化もされていますね。主演の市原隼人さんが若いですw少年です。
リリイ・シュシュのすべての世界観が好きな人は、本作も好きかもしれません。
実はまだ途中までしか読めていないので、いったいどんな結末を迎えるのか、今から楽しみです。
ちなみに、Kindle先生によると5時間ほどで読了出来るとのことです。掲示板やチャットのシーンなんかは改行や余白も多いですし、体感速度としてはもっと速い印象です。気軽に読める分量なので、オススメです。