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【ネタバレ注意】大江健三郎「叫び声」が面白くて1日で読み切った


大江健三郎といえば読みづらいという印象を持っていましたが、それは作品によるんだなと実感。
ちなみに、これまで読んだ作品を読みやすい順に並べるとこんな感じ。

  1. 叫び声 (講談社文芸文庫)
  2. あいまいな日本の私 (岩波新書)
  3. 死者の奢り・飼育 (新潮文庫)
  4. ヒロシマ・ノート (岩波新書)
  5. 万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

さて本題に戻って、「叫び」のどんなところがよかったかをまとめてみました。
ネタバレ要素を多分に含みますので、ご注意ください。

奇抜なキャラクター設定

主人公:フランス文学を専攻する大学生。娼婦と交接して以来、「梅毒」への恐怖に悩む。
:アフリカ人の父と日本人の母を持つ。「黒人」と「黄色人種」の混血であることから、「虎」と呼ばれる。ジゴロであり、アルコール中毒。
呉鷹男(くれ たかお):韓国人の父と日本人の母を持つ。自身を「怪物」と称している。「オナニイの魔」である。
ダリウス・セルベゾフ:癲癇持ちのアメリカ人。百科事典のセールスを生業としている。「友人たち(レ・ザミ)号」と名付けたヨットで、3人と世界旅行を計画するパトロン。

4人がこの物語の主要登場人物です。
濃いですねーw

明確な章建て

次に、章と流れがすごく明瞭で良かったです。

  1. 友人たち
  2. セックスの問題
  3. 虎の行動
  4. 怪物
  5. 真夜中

という5つの章からなるのですが、スルスルと流れるように展開していくのでわかりやすかった!
まず登場人物の紹介をする「友人たち」、各人の「セックスの問題」、次に虎と呉鷹男に焦点を当てた「虎の行動」と「怪物」、そして最終章の「真夜中」。
途中から予感させる悲しい結末に向かって、進みたくないのにどんどん疾走して読み進めてしまいます。

喜劇的悲劇

※ネタバレ注意※

「可笑しみを持った悲劇」とでもいいたくなるエピソードが新鮮でした。
それが顕著なのが虎の死。
虎は、黒人と日本人とのハーフであることを利用し、アメリカ兵の格好をして銀行強盗を働くことを思いつきます。
(アメリカ兵が罪を犯しても、米軍が基地内で犯人を探して処罰を決めるため、時間が稼げる。)
そこで予行演習のために、アメリカ軍基地のある横須賀へ行き、アメリカ兵の外套と靴を着て、日本の警察を挑発します。
何も手を出してこない日本警察に気を良くしていると、背後から白人の憲兵がやってくる。
虎は何を思ったか、呉鷹男の待つ車とは反対の方向へ、一人で駆けて逃げ出してしまいます。
その瞬間、不審に思った憲兵によって射殺されてしまうのです。

前方の日本警察、後方の白人憲兵。そしてそのどちらにも属さない混血の虎。
彼は米軍人の格好をしたまま、無様に銃殺されてしまいました。
悲劇なのに、どこかに可笑しさが覗く、そんな呆気無い死に様です。

「怪物」呉鷹男にも共通しているのですが、自分の居場所(アイデンティティ)を希求していても、結果、何にも属さない(属せない)若者たちがもがく様は、どこか滑稽さも持ち合わせているのかもしれません。

飽きさせない長さ

「長編傑作」とは銘打たれたものの、260ページなのでとても読みやすいです。
私は速読はできないためじっくり読むのですが、それでも3時間程で読了。
ストーリーにも飽きず、ちょうど良い長さでした。

最後に、この作品を象徴しているなぁと思った一文。

(中略)≪荒涼として荒涼と荒涼たり≫それは旅行に出たあとの僕のひとつの口癖となっていた。

何度も心で唱えていると不思議と馴染む印象的な言葉でした。

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