米国の電子書籍ベンダであるOverDrive社が実施した調査が面白い
国立国会図書館が運営する図書館ポータルサイト「カレントアウェアネス・ポータル」によると、2012年11月15日に、米国の電子書籍ベンダであるOverDrive社が行った、図書館の提供する電子書籍利用者を対象とした調査結果が発表されました。
「図書館で電子書籍を借りるひとはよく買うひとでもある」 OverDrive社とALAによる大規模ユーザ調査の結果が公表 | カレントアウェアネス・ポータル
興味深い内容だったのでご紹介します。
調査対象、時期
2012年11月15日、米国の電子書籍ベンダOverDrive社が、米国図書館協会(ALA)情報技術政策局(OITP)と共に行った、図書館の提供する電子書籍の利用者を対象とした調査の結果を発表しました。調査は、2012年6月13日から7月31日にかけてウェブ上で行われ、75,000人以上が回答しました。
なお、回答者の属性は以下の通り。
※大前提として、図書館の提供する電子書籍を利用している人がターゲットです。
・女性が78%
・40~64歳が55%
・75,000ドル以上の世帯収入が48%
・大卒以上の学歴が74%
殆どの回答者は女性ですね。
男性と半々になるとまた変わってくるかもしれません。
ちなみに、75,000ドルは現在の日本円で約610万円。
アメリカの中流階級程度の年収のようです。
主な調査結果として、次が紹介されています。
平均で月に3.2冊の(紙、電子)書籍を購入する
だいたいそんなものでしょうか。
アメリカだと大人が漫画雑誌を買わないイメージがあるので、日本よりは少ない冊数かもしれませんね。
少し古いですが、2008年の日本の調査では、月に4〜8冊購入している人が半数程度でした。
月平均の本購入費は? 調査:【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター 】
53%が、図書館のウェブサイトで知った書籍の購入を検討する
図書館のウェブサイトを、半数以上の人が活用していて、そのうち53%の人が購入する書籍に関する情報を得ているようです。
図書館で借りる人は借りられる限りは買わない人かと思っていましたが、自ら購入する場合も多いんですね。
読書に対する興味の強い人が図書館のウェブサイトを見る訳ですから、書籍の積極的な購買層とも言えますね。
53%が、図書館を物理的に利用し、電子書籍も借りている
Kindleの普及もあり、紙の本ではなく電子書籍で借りる人も多いようです。
紙の本の場合、すぐに読みたくても返却待ちの時間が生じたり、運ぶのが大変というデメリットがありますが、電子書籍だったらそこらへんが簡便です。
もし電子書籍リーダーを持っているなら、使わない手はないでしょう。
ただ、今回のアンケート対象者は
・女性が78%
・40~64歳が55%
という事ですから、苦手意識が強いイメージがある世代ではあります。
アメリカでは、年齢性別を問わず、日本より電子書籍がポピュラーな手段になっているという事でしょう。 ((私感ですが、日本で40代以上の女性が電子書籍を読んでいるところをあまり見た事がありません。
例えば我が家の55歳の母親も、iPadをプレゼントしましたが、今のところ電子書籍は読んでいないようです。))
本を読む手段が増えれば、読む機会が増えるでしょうし、良い事だと思います。
44%が、過去6か月で電子書籍の購入が増加した
年々、電子書籍ユーザは増えています。
中でも、米国は特に市場規模が大きくなっています。
野村総研の資料によれば、2009年と2010年の日本の電子書籍市場の伸びが緩やかなのに対し、アメリカでは格段に伸びています。
※pdf資料
www.nri.co.jp/publicity/mediaforum/2011/pdf/forum161.pdf
「日本は、米国に遅れることだいたい3年で本格化する」 ((電子書籍は買うだけじゃない! 図書館でもネット書店でも借りられる 米国の電子書籍事情|吉田克己の電子書籍フォーキャスト|ダイヤモンド・オンライン))という弁を信じれば、おそらく爆発的な電子書籍市場の拡大は2010年の3年後、2013年に来るという事でしょうか。
現在、日本ではやっとデバイスが出揃ってきたという感じですので、来年に向けて、これから益々伸びていくのかもしれません。
ちなみに我が家の電子書籍デバイスは、iPad2(でかい…)、iPhone、iPod touch、Kindle paperwhite 3Gがあります。
サイズを考えると、これから届く予定のKindle paperwhite 3Gが活躍しそうであります。
(iPad2はでかくてちょっと重いし、iPhoneとiPod touchはやはり小さいです。)
35%が、借りたあとでその(紙、電子)書籍を購入した
これ、紙の本より電子書籍の方が有り得そうな感じがしますね。
「返却期限までに読みきれなかったから」
「読んでみたらとっても良かったから」
という理由かと思いますが、私もたまに「これいいな」というやつを買ってしまいます。
電子書籍の方が、手軽で簡単(場合によっては安価)なので、比率としては多そうなのですが、どうでしょうか。
まとめ:アメリカの場合、公共図書館もマーケティングの意義ある対象である
アメリカでは、公共図書館もマーケティングの効果的な対象である、と今回の調査で裏付けされましたね。
この結果を受け、OverDrive社のマーケティング部長David Burleigh氏が、「公共図書館は出版社のマーケティング戦略において非常に重要な要素になってきている」と語っています。
日本ではまだ電子書籍に対応した図書館の数が少ないので、当てはまらないかもしれませんが…。
ちなみに日本で電子書籍サービスを提供している公共図書館は以下の8館のみ。(2012年3月時点) ((CA1773 – 動向レビュー:日本の公共図書館の電子書籍サービス-日米比較を通した検証- / 森山光良 | カレントアウェアネス・ポータルから引用しました。))
2012年3月時点で、電子書籍サービスを公式に実施している日本の公共図書館は、
東京都千代田区立図書館、
岐阜県関市立図書館、
大阪府大阪市立図書館、
大阪府堺市立図書館、
和歌山県有田川町立図書館、
山口県萩市立図書館、
山口県下関市立図書館、
佐賀県武雄市立図書館
今後増えてくれば必定、書籍マーケティングの対象として図書館も候補に挙げるべきでしょうね。